サウンドから醸し出されるエモーション。

ダンスとヒーリング。ある意味で正反対に位置する感覚を、
同時に体験させてくれたサウンド・トライブ・セクター9。
ハンター・ブラウン、
ザック・ヴェルマー、ジェフリー・ラーナー、
デヴィッド・フィップス、
デヴィッド・マーフィー。
の5人が放たれる音は、どこか美しく、そしてどこか清々しくて懐かしい。




PHOTO●RIE KASAHARA
TEXT●TAKASHI KIKUCHI

●音の裏側にひそむ意図。

── 日本では去年あたりから俄然注目を集めてきたサウンド・トライブ・セクター9ですが、結成したのはいつだったのですか。
STS9 97年にハンター、ザック、マーフィーの3人でバンドとしてスタートして、その編成で8ヶ月演奏したんだ。その後にフィップスと出会って、彼が参加してカルテットで1年くらい続けた。そしてジェフリーが加わったんだ。
── バンド結成当初から、オーガニックでありながらもエレクトリックなテクノとしても聞こえてくる今のような音だったのでしょうか。
STS9 サウンド的には5年前も似ているよ。バンドのモチベーションとして常に進化するという気持ちを、持ち続けているんだ。
── ジョージア州で結成されたんですよね。
STS9 そう、アトランタ。
── サンタクルーズに移ってきたメンバーもいるようですが、それはどういった理由からなのでしょう?
STS9 サンフランシスコ、ベイエリア一帯のカルチャーも引っ越してきた大きな理由だし、海が近いということも大きいかもしれない。景色がきれいだから、インスピレーションを刺激されるような場所でもあるしね。バンドを始めたときは、僕らはまだ18歳で、ツアーとしていろんなところには行くけれども、帰ってくるのは当然ジョージアだった。カリフォルニアのベイエリアを見たときに、こういうところに住みたいと思ったんだ。簡単に決めてしまって、2ヶ月後くらいには引っ越してきたよ。
── バックボーンとしては、どんな音楽を聴いてきたのですか。
STS9 5人とも、いろいろな音楽を聴いているよ。インドの伝統的な音楽からエレクトロニックを駆使した音楽まで。必ずしもすべての音楽を、楽しむために聞くわけではないね。どういうふうに音をソニック的に制御しているか、あるいは音を動かしているかというようなことが勉強できるような最新の音楽。そういうものも聴いて、ミュージシャンとして学習している。音の材料にしているという聴き方もあるよ。他のメンバーが薦めてくれるものを聴くことも多いね。
── セクター9の音には、オリジナリティがあると思います。しかもそれを演奏している、ジャムとして常にその場でクリエイトしていることに驚きがあります。
STS9 個人として、あるいはグループとして、それぞれが自分であること。それと集団としての性格、キャラクター。演奏している間はもちろん、それを常に見出している。見出すために努力しているんだ。人々はみんな違うわけだから、自分自身を正直に出すのであれば、結果としてオリジナルというのはある意味では当たり前のことかもしれない。バンドのなかでは、それぞれが、他のメンバーのアイデアや考えに対して、すごくオープンでいるんだ。それがこのバンドの存在の基盤になっていると思うよ。
── カリフォルニアとジョージア、アメリカの西と東。メンバーは離れたところで暮らしています。どうやって曲を作っているのでしょう?
STS9 曲それぞれは、いろいろな形で具現化されるんだけれど‥。例えばザックがメロディをもってきて、それをハンターが習って作り上げていく。マーフィーがベースラインを持ってきて、他のメンバーがそれを学んで作り上げていくこともある。ポータブルな作曲に使う機械を使って、ツアー中にある形にして、作り上げていくこともある。インプロビゼーションのなかで、バンド全体で気に入っていた部分があったとしたら、後からテープを聴き直して、それを基本として構築していくこともあるよ。コンピュータ上で作曲して、そのフォーマットが最後のレコーディングできるところまで継続していくこともあるし。コンピュータで作ったものを、これはライブ用に使えるものじゃないかって、ライブ用に変えていったりすることもある。いろんな方法で作っているよ。
── 最初の頃から、ライブではインプロビゼーションをメインにしていたのでしょうか。
STS9 確かにインプロビゼーションというのはバンドのライブとして一番メインなところだと思う。一緒に演奏すること、お互いにオープンであることは、インプロビゼーションの原動力となっている。個人個人が成長する過程で、あるいはバンドが成長していく過程で、お互いが分かり合う、知り合うことが大切なんだと思う。もっとも形になっている曲でも、そこにいろんなインプロビゼーションを入れることによって、常に変わっていく 。インプロビゼーションということ自体でも、いろんなやり方が発見できるんだ。それが人間としての成長と同機しているんだと思う。
── インプロビゼーションにおいて、もっとも大切なのは何だと思いますか。
STS9 リッスンすること、それからヒヤリングすること。音を聞いて、音の裏側にある意図を感じること。その両方を使って、聞こえてきたものに反応する。その姿勢が一番大切なんじゃないかと思う。
── その夜によって特別に誰かが引っ張っているような、そんな感覚もあるのでしょうか。
STS9 そういう時も、もちろんあるよ。
── セットリストはどうやって決めているのでしょうか。
STS9 いろんな要素があって、その日その日によって違うんだ。まずトーン・オブ・ザディ、僕らの感じる音やキーで決めることがある。単純に楽屋にいる人に「今日は何を聞きたい」と質問して決めることもあるよ。会場の雰囲気や、オーディエンスの雰囲気で、こんな曲がいいんじゃないかって決めることもある。




●セクター9というバンド名に込められた思い。

── マヤンカレンダーに着目して、バンドに関するいろいろなスケジュールをマヤンによって決定していると聞いています。いつ頃から、マヤンカレンダーを自分たちのカレンダーにしたのでしょう?
STS9 カレンダーを実際に使い始めたのは、バンドを結成して1年後のこと。結成時点でも、マヤンの智慧やマヤンカレンダーが存在することは知っていたんだ。実際にバンド名を決めた時も、マヤンの要素を取り入れた。マヤンにちなんだバンド名にすることによって、マヤンの存在を人々に伝えたいという気持ちもあったんだよ。
── その命名にかかわるところというのは、サウンド・トライブ・セクター9のどの部分なのでしょうか?
STS9 マヤンカレンダーのなかで、時代が分けられている。そのなかに、バックトゥナインという意識があるんだ。そのバックトゥナインの時代というのは、マヤンの文明が、アーティスティックな意味でも知能の意味でも、知識や科学という意味でも、一番高いところまで達していた時代なんだよ。その後、マヤンの文明は消えていってしまうんだけれど‥。バックトゥナインをセクターナインに変えて、バンド名にした。その大きな理由は、自然な人間たちが団結すること、ひとつになることを願うこと。マヤンがそうであったように、僕たちも文化とテクノロジーからアート、それからスピリット、高度なレベルに達したい、みんなも一緒に達しようよという呼びかけであり意思が込められているんだ。
── ライブ空間を、すべてに関する高度なレベルまでもっていきたいということなのでしょうか。
STS9 確かにそう。それが僕たちが目指すジャーニー(旅)なんだ。音と魂、動き、光というような要素が、どういうふうに人々に作用を与えて、ヒエラルキーの源になるのかというのを研究してるんだ。僕たちに注目してくれだとか、僕たちはこういうことができるんだとか、今までみんなが聞いたことがない音を作ってやるとか、そういうことではなくて、ヒーリングという人間に与える音の影響をポジティブな形で研究して、取り入れていく。
── バンドとしての存在意識を強力にアピールしなくてもかまわないということが、ある種クラブミュージックやダンスミュージックへのこだわりでもあるのでしょうか。
STS9 クラブミュージックに関係しているという意味で、例えばすごくいいDJというのは、見ているだけではそれほど面白くないものなんだけれど、彼らのやり方によってそこに音楽が生まれて、その音楽が人をユニファイドを与えることができる。そういうDJというのは、あまりエゴがなくて、「オレを見てくれ」というアピールがほとんどない。音楽を作り、その音楽にオーディエンスへの影響力を託す。ミュージシャンというのはそれほど大切な人種ではなくて、むしろオーディエンスがライブで生み出された音楽と、どのようにインタラクトするかっていうのが、一番大切なことだと思う。そういった空間のなかでは、バンドとクルーとオーディエンスの差があまりないんだよ。誰が偉いとかっていうのはまったくない。そういう場を作る、あるいはそういう場ができるような音楽を作る、それが僕らの目的なんだよ。何かをオーディエンスに求めるとか、何かをオーディエンスが感じてくれるだろうとか、そういう部分でクラブミュージック、ダンスミュージックとしては、それに似た形にSTS9の音楽は近づいているんじゃないかな。みんながひとつになれるような創造的な空間を目指している僕らが、どんな音楽を聴きたいかというのを、実際に自分たちで演奏しているだけなんだよ。
── ある種のニューエイジ的なフィーリングも、みなさんから感じられます。音楽や言葉からもそう受け取れる。ニューエイジ的なものを、あくまでダンスミュージックとして消化しているところが、特異な存在のような気がします。しかも現代のダンスミュージックにしている。
STS9 ニューエイジという意味は、スピリチュアリティと関係していると思う。オープンでいること、同時に自分自身でいること、それがまず存在している。そういう場でできる音楽というのは、ピュアなままのほうがいい。音楽をこうしようああしようという意図みたいなものは自然と生まれてくるんだ。ダンスミュージックということに関しては、古代から続く踊りというものは、ほとんどがセレブレーションだよ。つまりみんなで祝福するエネルギーがある。DJたちがやっていることは、その喜びや楽しみを知っていて、それを巧みに引き出しているんだと思う。僕らもセレブレーションということを大切に考えている。そういう考えだから、音がダンスミュージックに近づいていくんだと思う。スピリチュアルな形で喜びを感じるというのは、最終的に行き着くのは自分自身でいたい、あるいは自分自身でありたいという願い。しかも自分がどういう人間であるのかというのに気づいて、それに否定的ではなくて、自分自身を発見したときに、その発見とすごく平穏に受け入れる状態というのがあって、それをシェアしたいんだ。かつて大学に通っていて、それは自分自身でありたいといよりは、むしろ両親のためだったりしていたのかもしれない。いつだったかそう気づいて、バンドに参加することになった。STS9が自分自身でいること、自分自身がどういう人間かということにすごくポジティブで、ピースであることを許してくれる。そういう創造の場を提供してくれるバンドだったからね。ありのままに自分を見せる、表現することということで、その結果としてフロアで踊っている人々が、もっと自分自身になって、それを喜びと感じるような場を作りたい。もしバンドに意図があるとすれば、そういう音楽、そういう場を作るということだよ。


── 場を作るという点においては、日本のオーディエンスはどうでしたか。
STS9 5月23日のCAYのショーでは、来てくれた多くの人が、ただ音を追って聞いているだけではなくて、音のなかに感じ取るものも聞き入っていたように感じた。音への反応も、ものすごく良かったし、そういう環境で演奏できることっていうのは、実はアメリカでもあまりないんだよ。ベイエリアだって少ない。その意味では、日本のオーディエンスからはリスペクトを感じた。確かにオーディエンスは、リスニングとヒヤリングの両方をやっていたと思う。実際に彼らが感じていたかどうか、自分自身であるということを僕らの音楽で感じていたかどうかは、はっきりとは分からない。ただ、今僕らは、アメリカとは違って、ユニークな環境で演奏を続けている。その環境のなかで自分でいることは、それもユニークな体験だね。音楽が醸し出す、人々の心のなかのエモーション、心の感情というものを感じてくれてればいいんだけど。僕らの音楽は歌詞がないインストゥルメンタルだよね。僕たちが支持しているのは音楽は世界共通であるということ。音楽はユニバーサルであるということ。今までもずっとそれを信じてバンドを続けてきて、その思いが初めてテストされるときなので、僕らも実際にどうなのかっていうのは、試験的な状況なんだよ。
── 今回のジャパンツアーの日程というのは、マヤンカレンダーにのっとって決められたのでしょうか。
STS9 そうでもありそうでもない。両方だよ。暦を見て、この日はこうだから行こう、ライブをどうしてもやろうと決めるわけではなくて。日本に行くということが徐々に固まってきて、たまたま5月23日から25日までという3日間になった。さて、日本という環境で、この日はどういう環境になるのか。自然にその日が作られていく、それがどういうふうな日なのかは知っているんだけど、それがどうライブによって現れてくるのか。そういうスタンスなんだ。
── 3日間というスケジュールのなかで、連日環境が変わっていく。初日が小さなライブハウス、2日目がオールナイトのパーティー、そして最終日が野外でのレイブ。日本のオーディエンスも、日々違うシチュエーションで、それぞれ違ったインパクトを受けたと思います。
STS9 まったく同じことがバンドにも言えることで、5年間アメリカのいろんなところで、いろんな環境でライブをやってきて、今度はじめて日本に来た。日本では3つのまったく違う環境でプレイできた。それは、僕らにしても本当に幸運だったよ。


http://www.sts9.com/

 

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